研究内容

鈴木研究室の研究紹介


1. 研究概要


 今世紀における私たちの社会の最重要課題は、持続可能な社会を構築することです。資源・エネルギーの観点からは、環境負荷の小さな新しいシステム開発が必要となっていますが、日本は、狭い国土に対して広大な排他的経済水域を持つため、課題解決に向けた海の持つポテンシャルは極めて大きいと言えます。
 そこで、当研究室は、風、海流・潮流、温度差、波、太陽といった海洋の再生可能エネルギーに注目しています。この分野では、実用化に向けて世界的な研究競争が行われおり、この流れの中で日本が他国をリードすることができれば、非常に大きな意味を持ちます。
 加えて、海底鉱物資源の開発や気候変動対策としてのCO2海洋隔離、海洋環境改善による漁場形成、海洋空間を利用した環境負荷の小さい物流資源備蓄施設など、海洋の空間利用に関する研究を幅広く行っています。これらの研究開発や実現をリードするために、それぞれのコンセプト企画を行う一方で、先端的な要素技術として、ライザーや浮体構造物のVIV・VIM挙動予測や、位置保持・材料など海洋プラットフォームの開発に取り組んでいます。
 下に、それぞれのテーマについて紹介します。

 

2. 洋上風力発電


  海の上で風力発電を行う洋上風力発電は、脱炭素に向けた世界的な流れの中で最も注目されている発電システムの一つです。洋上では、陸上に比べ、乱れの少ない高風速の風が得られることに加え、騒音が問題になりにくいなど多くのメリットを有します。陸上における風力エネルギー資源が数百万KWと評価される一方で、洋上においてはこれを遥かに上回るポテンシャルが賦存すると言われている日本においても、この洋上風力発電を大量導入することは、国の定める二酸化炭素排出量削減目標(NDC)を達成するには必要不可欠です。一方、日本周辺の海域は沖合いに出ると急激に深くなるという特徴を持つため、ヨーロッパで導入が進められている着床式の風車は大量導入が望めません。従って浮体式の洋上風力発電システムの開発と低コスト化が急務となっています。
 当研究室では、浮体式洋上風車開発に貢献するため、数値計算やシミュレーションを用いた浮体動揺に関する研究や、新たな係留システムに関する研究を行っています。最近ではJMUとのスパー型洋上風車の運動特性改善や、風車-浮体-係留-制御連成応答解析法の開発など活発な研究が行われています。また、システムのコスト削減を目的としたNEDOによるバージ形式の浮体式洋上風車の実証実験などにも参加しています。

バージ形式の浮体式洋上風車

3. メタンハイドレード開発システム


 日本周辺の海底下には、メタンハイドレートというエネルギー資源が多量に存在しています。このメタンハイドレートの開発システムは、生産性の観点から、多数の浅深度水平坑井を用いた生産方式となることが想定されます。
 当研究室では、生産井、プラットフォーム(係留、サブシーを含む)、処理施設、パイプラインからなる生産システムについて、メタンハイドレートに特化したコンセプト開発に取り組んでいます。

メタンハイドレートの生産システム

4. 海洋空間利用


 国土が狭い日本において、海洋空間を産業や物流、居住といった目的のために利用することができれば、様々な分野での著しい発展と新たな可能性の創出が期待されます。
 当研究室では、海洋空間を利用するための超大型浮体システム(メガフロート)の計画を行っています。

5. 船舶の安全性


船舶は、日本の最も重要な産業の一つですが、今後様々な利用・開発が想定される海洋において、その安全性を担保することは大きな課題となっています。
 当研究室では、船舶の安全な航行に向け、海上の大規模ウィンドファーム(多数の風車により構成される風力発電所)における船舶と船体の衝突リスクに関する研究や、波浪中(特に巨大波、フリーク波など)での船体の流体弾性応答に関する研究に取り組んでいます。
 また、遭遇波浪の情報やセンサーで計測されるモニタリング情報をシミュレーションに融合(データ同化)させて船体構造の健全性を評価する、「船体構造デジタルツイン」の開発プロジェクトにも参画しています。

ウィンドファーム中の作業船のイメージ図